2026.10.28
企業SNSは”踊らなくても”成果が出る─中小企業がSNS運用で最初に決めるべき「ゴール」と「価値」の見つけ方

─岡山でマーケティング支援をしている私が、SNS運用代行のご相談で必ず最初にやること

岩崎です。最近、SNS運用代行のご依頼が目に見えて増えています。

経営者の方とお話ししていると、「そろそろSNSをちゃんとやらないと、ヤバいんじゃないか」という空気を、ひしひしと感じます。取引先も競合もアカウントを持っている。求職者は応募前にInstagramを見てくる。お客様からも「SNSやってないんですか?」と聞かれる。焦る気持ちは、とてもよく分かります。

ただ、一口に「SNSをちゃんとしたい」と言っても、抱えている課題は会社ごとにまったく違います。ご相談の中で実際に出てくる声を並べると、こんな具合です。

  • そもそもSNSアカウントを持っていない
  • アカウントはあるけど、全然更新できていない
  • 最近は写真より動画がいいと聞くけど、動画までは作れない
  • 担当者が一人でやっていて、今の方向性が正しいのか分からない。相談できる相手もいない
  • 企業アカウントでも、バズっている動画のようにはしゃいだり踊ったりした方がいいの?
  • もっと集客を増やすために使いたい
  • 人手不足に対してSNSを活用したい
  • ブランディングをしていきたい

ざっと挙げただけでも、これだけあります。そして大事なのは、この中の「どれに当てはまるか」によって、やるべきことがまったく変わるということです。

この記事では、地方の中小企業がSNS運用で迷わないための考え方と、私たちが実際にご支援の最初に行っている手順をご紹介します。


1. SNSがうまくいかない会社の共通点は、「手段」から始めていること

「Instagramを始めよう」「TikTokで動画を出そう」「週3回は投稿しよう」。

SNSの相談でよく聞くこれらは、すべて手段の話です。手段から始めると、何が起きるか。投稿すること自体が目的になり、しばらくすると「何を投稿すればいいか分からない」「続けているけど、何が変わったのか分からない」という状態に陥ります。更新が止まってしまうアカウントの多くは、担当者の努力不足ではなく、そもそもゴールが決まっていないことが原因です。

販促キャンペーンが「やって終わり」になってしまう構造と、まったく同じです。

▶︎ あわせて読みたい:地方企業の販促キャンペーンは、なぜ「やって終わり」になるのか|IWO岩崎/岡山の広告代理店

では、どうすればいいか。答えはシンプルです。

まず、その課題を解決したときに達成できる「ゴール」を設定すること。


2. ゴールが変われば、SNSの「正解」も変わる

冒頭に挙げた悩みは、大きく分けると次の3つのゴールに集約できます。

・集客

ゴール:来店数、問い合わせ数、予約数

届けたい相手:見込み客・既存のお客様

 

・採用

ゴール:応募数、面接時の「SNSを見た」の割合、入社後の定着

届けたい相手:求職者

 

・ブランディング

ゴール:指名検索、保存数、ファンからの反応の質

届けたい相手:今のファン・将来のファン

 

同じInstagramでも、集客のためのアカウントと採用のためのアカウントでは、投稿する内容も、見るべき数字も、言葉づかいも違います。集客なら「このお店に行きたい」と思ってもらう投稿が必要ですし、採用なら「この会社で働く自分」を想像してもらう投稿が必要です。

ゴールを決めずに運用すると、この両方を一つのアカウントで中途半端にやることになり、誰にも刺さらなくなります。

「踊った方がいいの?」への答え

ここで、ご相談の中で意外と多い質問にお答えしておきます。

「企業アカウントも、バズっている動画みたいに、はしゃいだり踊ったりした方がいいんですか?」

答えは、ゴール次第です。踊らなくても成果は出ます。

例えば、若手人材の採用がゴールで、実際に社内の雰囲気が明るく、社員の方が楽しんで出てくれるなら、それは会社の「らしさ」を伝える立派な手段です。一方で、信頼が何より大事な業種で、お客様が求めているのが「丁寧さ」や「確かな技術」なのに、無理に流行りのダンスを取り入れると、かえって「この会社、大丈夫かな」と思われてしまうこともあります。

バズは、目的ではなく結果です。1回のバズで10万回再生されるより、届けたい100人に「ここがいい」と思ってもらえる方が、地方企業にとってはずっと価値があることの方が多いのです。

自社の”尖り”を丸めず、自分たちらしいやり方で選ばれる、という考え方は、こちらの記事でも書いています。

▶︎ あわせて読みたい:3445組の頂点は、なぜ「尖ったまま」勝てたのか─キングオブコント2026に学ぶ、地方企業のマーケティング|株式会社IWO ブログ


3. 課題解決のヒントは、必ず「現場」にある

ゴールが決まったら、次は「何を発信するか」です。

ここで多くの会社が、ネットで「バズる投稿ネタ」を調べたり、同業他社のアカウントを真似したりします。でも、それでは他社と同じ発信になるだけです。

私たちがSNS運用のご支援で最初に行うのは、当事者への徹底的なヒアリングです。経営者や担当者の方だけでなく、その会社に関わる「人」に直接話を聞きます。

  • 採用がゴールなら → 従業員の方に「なぜ今、この会社で働いているのか」を聞く
  • 集客がゴールなら → リピーターのお客様に「なぜまた買ってくださるのか」を聞く
  • ブランディングがゴールなら → 今のファンの方に「なぜ好きでいてくれるのか」を聞く

インタビューを重ねていくと、会社の人たちが当たり前すぎて気づいていなかった「本当の価値」が見えてきます。

例えば、ある会社では、経営者は「給与や福利厚生をアピールすべき」と考えていましたが、社員の方に話を聞くと、入社の決め手として何人もが口にしたのは「面接のときの先輩の話し方が優しかった」ことでした。またある店舗では、店主が自慢していたのは商品のこだわりでしたが、常連のお客様が通い続ける理由は「名前を覚えて声をかけてくれるから」でした。

こうした、本人たちも言語化していなかった”本音”=インサイトこそが、SNSで発信すべき「価値」です。これは、どれだけ検索してもAIに聞いても出てこない、その会社にしかない一次情報です。

▶︎ あわせて読みたい:「プロモーションの前に、まず「顧客戦略」を。AIでは埋められない一次情報の価値とは」IWO岩崎/岡山の広告代理店

▶︎ あわせて読みたい:「【保存版】ペルソナを作って満足しない、成果に直結する「顧客戦略MAP」の重要性と、AIを活用した最新の顧客理解手法」(IWO岩崎/岡山の広告代理店)


4. 見つけた「価値」を、届く形で発信する

インサイトが見つかったら、それを発信できる形に落とし込みます。ここで意識したいポイントは3つです。

① 「何ができるか」ではなく「どう変われるか」を伝える

「最新の設備があります」より「待ち時間が半分になりました」。「研修制度が充実」より「未経験で入った先輩が、3年目で現場を任されています」。SNSは一瞬でスクロールされる場所なので、見た人が自分ごととして想像できる言葉で伝えることが欠かせません。

▶︎ あわせて読みたい:「何ができるか」より「どう変われるか」-選ばれるマーケティングは価値訴求で決まる。|IWO岩崎/岡山の広告代理店

② 動画は「凝る」より「伝わる」

「動画までは作れない」というお悩みもよく伺いますが、SNS動画に映画のようなクオリティは必要ありません。むしろ、インタビューで出てきた社員の方の一言や、お客様とのやりとりの何気ない場面の方が、作り込んだ映像よりも強く伝わることがあります。大事なのは編集技術ではなく、何を映すかです。そして「何を映すか」は、ヒアリングの段階でほぼ決まっています。

価値を物語として伝えるコツは、当社ブログでも詳しくまとめています。

▶︎ あわせて読みたい:「真面目にやってきました」だけでは、伝わらない─地方企業のための、ストーリーテリングで伝える会社の魅力|株式会社IWO ブログ

③ 芯はぶらさず、届け方は変える

採用向けにはInstagramとTikTok、既存のお客様にはLINE、というように、相手によって媒体や表現は変えて構いません。ただし、ヒアリングで見つけた「価値」という芯だけは、すべての発信で一貫させること。これがブランディングの土台になります。

▶︎ あわせて読みたい:広告の伝え方は”1つ”じゃ足りない──顧客インサイトから設計する、複数配信という考え方|IWO岩崎/岡山の広告代理店

▶︎ あわせて読みたい:地域密着企業こそ「ブランディング」で勝てる、”らしさ”を磨く方法|IWO岩崎/岡山の広告代理店

なお、お客様に投稿をお願いしたり、インフルエンサーに依頼したりする場合は、ステルスマーケティング規制(景品表示法)に注意が必要です。依頼や対価の提供がある投稿は、「#PR」など広告であることが分かる表示を必ずセットにしてください。


5. 「一人担当」を孤立させない仕組みをつくる

最後に、とても多いのが「担当者が一人で、相談できる相手がいない」というお悩みです。

一人担当の方は、投稿の企画から撮影、編集、コメント対応、数字の確認まで、すべてを兼務で抱えています。しかも、方向性が正しいかどうかを判断する基準がないまま走っている。これでは疲弊して当然です。

ここでも効いてくるのが、最初に決めたゴールと見るべき数字です。基準があれば、「今月は保存数が増えたから、この方向で合っている」「フォロワーは増えたけど問い合わせにつながっていないから、内容を見直そう」と、担当者自身が判断できるようになります。数字だけでなく、「なぜその投稿が反応されたのか」という理由まで振り返ると、次の一手がぐっと明確になります。

▶︎ あわせて読みたい:数字だけ見ても、答えは出ない─「理由」と「数」を両方見るマーケティングの話|IWO岩崎/岡山の広告代理店

すべてを外注する必要はありません。企画とヒアリングはプロと一緒に、日々の投稿は社内で、というように役割を分ければ、少ない人数でも続けられます。最終的には、社内で回せる状態をつくることがゴールです。

▶︎ あわせて読みたい:社内に担当がいない中小企業でもできる!マーケティング自走化の進め方|IWO岩崎/岡山の広告代理店

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よくある質問(Q&A)

Q. SNSを始めるなら、どの媒体がいいですか? A. ゴールと届けたい相手で決めます。若手の採用ならInstagramやTikTok、地域の既存顧客との関係づくりならLINE公式アカウント、というのが一つの目安です。最初から全部やる必要はなく、1つに絞って始める方が続きます。

Q. 動画が作れないと、SNSはやっても意味がないですか? A. そんなことはありません。スマートフォンで撮った短い映像や写真でも、伝える「価値」がはっきりしていれば十分に効果があります。編集技術より、何を映すかが大切です。

Q. SNS運用代行には、何を頼めばいいですか? A. 投稿作業だけを外注するより、ゴール設定・ヒアリング・発信方針の設計といった「最初の土台づくり」をプロと一緒に行うことをおすすめします。土台があれば、日々の運用は社内でも回せるようになります。


まとめ:SNSで発信すべきものは、もう会社の中にある

SNS運用で成果が出るかどうかは、投稿の回数でも、動画の編集技術でも、流行りに乗れるかどうかでもありません。

「何のためにやるのか」というゴールを決め、現場の声からその会社にしかない「価値」を見つけ、それを届けたい人に届く形で発信すること。 やるべきことは、ほぼこれだけです。

そして、その「価値」は、外から探してくるものではありません。働いている社員の方の中に、通い続けてくださるお客様の中に、すでに眠っています。私たちの仕事は、それを掘り起こして、言葉と映像にすることだと考えています。

「そろそろSNSをちゃんとしないと」と感じているなら、まずはアカウントを作る前に、「誰に、何を届けたいのか」を一緒に整理するところから始めてみませんか。


SNS運用代行では、ゴール設定から従業員・お客様へのインタビュー、発信方針の設計、写真・動画の制作、そして社内で運用を続けられる体制づくりまで、トータルでお手伝いしています。「うちのSNS、何から始めればいいんだろう」とお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。