2025.10.28
顧客ピラミッドで見る!中小企業のマーケティング成長ステップ

【はじめに】

広告をがんばっているのに、売上が伸びたり伸びなかったり。そんなときは「お客さまを同じ人」として見てしまっていることが多いです。実際には、よく買ってくれる人、たまに買う人、しばらく来ていない人、まだ買ったことがない人…と、層が分かれています。本稿では、これを「顧客ピラミッド」と呼び、層ごとにやることを整理します。むずかしい仕組みは不要です。まずは手元の名簿や売上データを“ざっくり”分けるところから始めましょう。

【顧客ピラミッドとは】

顧客を次の4つに分けて考える、ただそれだけです。

  1. ロイヤル顧客:よく買う・高いものも買う・人に紹介してくれる。
  2. 一般顧客:買ったことはある。頻度や単価は平均くらい。
  3. 離反顧客:しばらく買っていない元お客さま。目安は6〜12か月。
  4. 認知・未購買:あなたの会社を知っている、または知らない。まだ買っていない人。

ポイントは「層によって、次に進むための壁がちがう」ということです。ですから、同じ広告や同じ言い回しでは、全員には響きません。

【まずやること:現在地の見える化】

  • 名簿や販売履歴から「最終購入日」「購入回数」「平均単価」を取り出します。
  • 上からざっくり20%をロイヤル、次の50%を一般、12か月以上買っていなければ離反…のように、仮の線引きをします。完璧でなくて大丈夫です。
  • 表計算ソフトで色分けし、人数と売上比率を見ます。「どの層に力を入れると全体が伸びそうか」を判断するための材料ができます。

【ロイヤル顧客:今の満足を守り、自然な紹介を生む】

ねらいは3つです。「続けてもらう」「少し上の提案をする」「紹介してもらう」。

  • 続けてもらう:定期点検、会員特典、先行予約など。「来る理由」を作ります。
  • 少し上の提案:使い方に合う上位プラン、関連商品、セットの案内。押し売りはNG。
  • 紹介:紹介した人・された人の両方がうれしい小さな特典。たとえば「次回10%オフ+ミニ特典」。

実例イメージ:
・住宅関連:オーナー様点検月間をつくり、来場時に「ご家族や友人向けの体験見学券」を同封。点検満足→紹介→来場という流れを作る。
・BtoB:長く使ってくれている会社と、オンライン事例会を共同開催。そこでの話を記事にし、見込み客に配信。

見る数字(KPI):継続率(やめずに続いている割合)/紹介率(紹介が何件生まれたか)/LTV(長い目で見た売上)。月に一度、先月との差を確認します。良かった点を増やし、悪かった点は一つに絞って改善します。

【一般顧客:もう一歩の後押しをつくる】

一般顧客は「悪くないけど、決め手に欠ける」状態が多いです。価格の不安、使い方の不安、違いの分かりづらさが壁です。

  • 行動のきっかけを作る:最後に買ってから〇日でクーポン、よく見ている商品に合わせたお知らせ、カゴに入れて止まっている人への連絡など。
  • 選びやすくする:ベーシック/おすすめ/しっかり、の3つに段差をつけ、違いを表にして見せる。
  • 不安を消す:保証、よくある質問、実際の使い方の写真・動画、導入後のサポート内容をはっきり書く。

実例イメージ:
・外構やリフォーム:価格の目安と工期の目安を、写真のすぐ下に載せる。見学・相談予約までのボタンを大きく一つに絞る。
・サービス提供(SaaSなど):14日お試し→2週目に「つまずきやすい箇所のガイド」を自動で送る。反応がない人だけ担当者が短い電話でフォロー。

見る数字:再購入率、平均単価、予約率、ページからの問い合わせ率。改善は「ボタン文言」「価格表の見せ方」「FAQの位置」など小さく試して、小さく学びます。

【離反顧客:戻ってもらう+離反の理由を学びに変える】

離反は悪ではありません。理由がわかれば、次に活かせます。

  • まず理由を分ける:価格、品質、タイミング、対応の遅れ、引っ越し…など。推測でもよいのでラベルを付けます。
  • 戻りやすい入口を用意:改善点を一言で示し、「もう一度ためす」ための軽い特典を用意。たとえば「前回ご迷惑をおかけしたので、今回は送料当社負担+即日対応」など。
  • 社内に戻す:同じ理由の離反が減るように、手順書やチェック項目に組み込みます。

実例イメージ:
・EC:配送遅延の経験者に、次回だけ日時指定を無料に。到着の確実さを前面に出して案内。
・工事系:点検の連絡が遅かったことが原因なら、点検期日の前に自動通知を入れ、当日の担当からも一報を入れるルールにする。

見る数字:離反率(今月どれくらい離れたか)/復帰率(戻ってくれた割合)/理由別の改善率(同じ理由がどれだけ減ったか)

【認知・未購買:最初の一歩のハードルを下げる】

まだ買っていない人には「そもそも知らない」「良さが伝わっていない」「比較の仕方が分からない」などの壁があります。

  • 小さく試せる入口:無料診断、短時間の見学、ミニ体験、PDF資料。ハードルを低くするほど一歩が生まれます。
  • 比べ方を先に示す:価格だけでなく、安心・速さ・アフター対応など、あなたの強みで比べられる表を用意します。
  • 広告や投稿は“ひとつの悩み”に絞る:欲張らず、1投稿1メッセージ。「30分で要点だけ見学」「初めてでも分かる費用の目安」など。

実例イメージ:
・住宅:子ども連れ歓迎の「30分クイック見学」を用意。長い説明はしない。後日ゆっくり相談につなげる。
・BtoB:業種別の「効果が出やすいポイント診断」を作り、結果に合わせて短い提案文を送る。

見る数字:初回の行動率(資料請求、見学予約など)/初回から次の行動への移行率(資料→相談など)/指名検索数(社名で検索される回数の変化)

【数字の見方は“二階建て”にする】

一階:層ごとの数字(たとえば、一般顧客の再購入率)。
二階:全体の数字(売上、粗利、LTV)。
層の数字が良くなっているのに全体が伸びないなら、配分がずれている可能性があります。たとえば未購買ばかり増えて、既存客のケアが手薄になっていないか…といった見直しができます。

【90日(3か月)サイクルで回す】

  • 0〜2週:仮説を決める(どの層に何を試すか、数字は何を見るか)。
  • 3〜8週:小さなテストを同時にいくつか走らせる(ボタン文言、特典の違い、写真の入れ替えなど)。
  • 9〜10週:結果が良かったものに集中。悪かったものはやめる。
  • 11〜12週:うまくいったやり方を短い手順書にして、次回も同じ質でできるようにする。

小さく試す → 学ぶ → 形にする。この繰り返しが「勝ちパターン」になります。

【よくある失敗と回避】

  • 全員に同じメッセージ:層ごとに言い回しと“次の行動”を変える。
  • やることが多すぎる:一度に3つ以内。増やすより、やめる力が大事。
  • 数字が複雑すぎる:最初は信号機の色分け(赤・黄・緑)で十分。
  • 離反を放置:理由を集めるだけでも、来月の無駄が減ります。

【明日からできるチェックリスト】

  1. 名簿を4つに分けたか(ロイヤル/一般/離反/未購買)。
  2. それぞれ「次にしてほしい行動」を1つ決めたか。
  3. その行動に進みやすくなる“ひと押し”を用意したか(特典、表、FAQ、短い動画など)。
  4. 見る数字を各層1つずつ決めたか。
  5. 90日サイクルの予定を決めたか(いつ試す、いつ見直す)。

【短いケース集(参考になる型)】

ロイヤル向け:点検イベント+紹介カード。イベント満足度が高いほど、紹介が自然と増える。
一般向け:3段階のプラン表。真ん中に“いちばん人気”を設定すると選ばれやすい。
離反向け:理由別に案内文を変える。配送遅延なら「今回最優先でお届け」など、改善点を一言で。
未購買向け:30分体験・無料診断・写真でわかる価格帯。まずは一歩のハードルを下げる。

【まとめ】

顧客ピラミッドは、きれいに分けるための表ではありません。限られた時間とお金を、いちばん効果が出る所に配るための道具です。まずは“ざっくり”でいいので4つに分ける。層ごとに「次の一歩」を決める。小さく試して、良かったものを残す。これだけで、同じ予算でも成果の伸び方が変わります。今日からできることは、名簿の色分けと、各層1つの“ひと押し”づくり。むずかしく考えず、シンプルに始めましょう。