【はじめに】
広告をがんばっているのに、売上が伸びたり伸びなかったり。そんなときは「お客さまを同じ人」として見てしまっていることが多いです。実際には、よく買ってくれる人、たまに買う人、しばらく来ていない人、まだ買ったことがない人…と、層が分かれています。本稿では、これを「顧客ピラミッド」と呼び、層ごとにやることを整理します。むずかしい仕組みは不要です。まずは手元の名簿や売上データを“ざっくり”分けるところから始めましょう。
【顧客ピラミッドとは】
顧客を次の4つに分けて考える、ただそれだけです。
ポイントは「層によって、次に進むための壁がちがう」ということです。ですから、同じ広告や同じ言い回しでは、全員には響きません。
【まずやること:現在地の見える化】
【ロイヤル顧客:今の満足を守り、自然な紹介を生む】
ねらいは3つです。「続けてもらう」「少し上の提案をする」「紹介してもらう」。
実例イメージ: ・住宅関連:オーナー様点検月間をつくり、来場時に「ご家族や友人向けの体験見学券」を同封。点検満足→紹介→来場という流れを作る。 ・BtoB:長く使ってくれている会社と、オンライン事例会を共同開催。そこでの話を記事にし、見込み客に配信。
見る数字(KPI):継続率(やめずに続いている割合)/紹介率(紹介が何件生まれたか)/LTV(長い目で見た売上)。月に一度、先月との差を確認します。良かった点を増やし、悪かった点は一つに絞って改善します。
【一般顧客:もう一歩の後押しをつくる】
一般顧客は「悪くないけど、決め手に欠ける」状態が多いです。価格の不安、使い方の不安、違いの分かりづらさが壁です。
実例イメージ: ・外構やリフォーム:価格の目安と工期の目安を、写真のすぐ下に載せる。見学・相談予約までのボタンを大きく一つに絞る。 ・サービス提供(SaaSなど):14日お試し→2週目に「つまずきやすい箇所のガイド」を自動で送る。反応がない人だけ担当者が短い電話でフォロー。
見る数字:再購入率、平均単価、予約率、ページからの問い合わせ率。改善は「ボタン文言」「価格表の見せ方」「FAQの位置」など小さく試して、小さく学びます。
【離反顧客:戻ってもらう+離反の理由を学びに変える】
離反は悪ではありません。理由がわかれば、次に活かせます。
実例イメージ: ・EC:配送遅延の経験者に、次回だけ日時指定を無料に。到着の確実さを前面に出して案内。 ・工事系:点検の連絡が遅かったことが原因なら、点検期日の前に自動通知を入れ、当日の担当からも一報を入れるルールにする。
見る数字:離反率(今月どれくらい離れたか)/復帰率(戻ってくれた割合)/理由別の改善率(同じ理由がどれだけ減ったか)
【認知・未購買:最初の一歩のハードルを下げる】
まだ買っていない人には「そもそも知らない」「良さが伝わっていない」「比較の仕方が分からない」などの壁があります。
実例イメージ: ・住宅:子ども連れ歓迎の「30分クイック見学」を用意。長い説明はしない。後日ゆっくり相談につなげる。 ・BtoB:業種別の「効果が出やすいポイント診断」を作り、結果に合わせて短い提案文を送る。
見る数字:初回の行動率(資料請求、見学予約など)/初回から次の行動への移行率(資料→相談など)/指名検索数(社名で検索される回数の変化)
【数字の見方は“二階建て”にする】
一階:層ごとの数字(たとえば、一般顧客の再購入率)。 二階:全体の数字(売上、粗利、LTV)。 層の数字が良くなっているのに全体が伸びないなら、配分がずれている可能性があります。たとえば未購買ばかり増えて、既存客のケアが手薄になっていないか…といった見直しができます。
【90日(3か月)サイクルで回す】
小さく試す → 学ぶ → 形にする。この繰り返しが「勝ちパターン」になります。
【よくある失敗と回避】
【明日からできるチェックリスト】
【短いケース集(参考になる型)】
ロイヤル向け:点検イベント+紹介カード。イベント満足度が高いほど、紹介が自然と増える。 一般向け:3段階のプラン表。真ん中に“いちばん人気”を設定すると選ばれやすい。 離反向け:理由別に案内文を変える。配送遅延なら「今回最優先でお届け」など、改善点を一言で。 未購買向け:30分体験・無料診断・写真でわかる価格帯。まずは一歩のハードルを下げる。
【まとめ】
顧客ピラミッドは、きれいに分けるための表ではありません。限られた時間とお金を、いちばん効果が出る所に配るための道具です。まずは“ざっくり”でいいので4つに分ける。層ごとに「次の一歩」を決める。小さく試して、良かったものを残す。これだけで、同じ予算でも成果の伸び方が変わります。今日からできることは、名簿の色分けと、各層1つの“ひと押し”づくり。むずかしく考えず、シンプルに始めましょう。