2026.10.19
3445組の頂点は、なぜ「尖ったまま」勝てたのか─キングオブコント2026に学ぶ、地方企業のマーケティング

─岡山でマーケティング支援をしている私が、土曜の夜にメモを取りながら観ていたこと

岩崎です。

先週土曜日、10月17日。『キングオブコント2026』の決勝をご覧になった方も多いと思います。

優勝はジェラードン。1本目「酔っ払い」、2本目「マジックバー」で、どちらも671点。合計1342点で、エントリー3445組の頂点に立ちました。2位は蛙亭、3位はヤッホイでした。

(出典:お笑いナタリー、FANY マガジン)

私は普段、岡山で企業のマーケティング支援をしています。お笑いはいち視聴者として好きなだけなのですが、今年の決勝は、観ながら思わずメモを取ってしまいました。「選ばれる」ための原則が、4分間のコントと、その後の優勝会見にぎっしり詰まっていたからです。

この記事では、キングオブコント2026を「マーケティングの教科書」として読み解いてみます。地方の中小企業の経営者・担当者の方に、明日の仕事で使える形でお届けできればと思います。

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1. 「2本とも671点」─勝ったのは、一発のウケではなく”再現性”だった

今回いちばん唸ったのが、1本目と2本目がまったく同じ671点だったことです。

賞レースでは、1本目で爆発して2本目で失速する、というのはよくある話です。ところがジェラードンは、まったく違うネタで、まったく同じ最高水準を出した。これは「たまたまハマった」のではなく、自分たちの笑いの取り方を、型として持っていることの証明だと思います。

ビジネスに置き換えると、こういうことです。

  • 1回だけ当たったキャンペーン → 何が効いたか説明できないので、次は外れる
  • 毎回一定の成果が出る施策 → 「なぜ効くのか」を言語化できているので、再現できる

地方企業のご相談で多いのは、前者のパターンです。「去年のあのチラシは反響があったんだけど、今年同じことをやったらダメだった」。これは、成果が出た”理由”を検証しないまま、”形”だけを真似していることが原因であることがほとんどです。

数字(何件反響があったか)と、理由(なぜその人は反応したのか)。この両方を押さえて初めて、2本目でも同じ点数が出せるようになります。

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もうひとつ印象的だったのが、優勝後の会見で、手持ちのネタの中で一番強いものを2本とも決勝で出し切ったと話していたことです。年明けのツアーで披露するネタの質を心配するほどに、です。

勝負どころで最強のカードを出し惜しみしない。展示会でも、年に一度の大型キャンペーンでも、「本命の訴求は次回に取っておこう」という判断で機会を逃しているケースは、意外と多いものです。


2. 「この芸風で優勝できるとは」──尖りを丸めなかったから、記憶に残った

ジェラードンといえば、ボケが2人いる「ダブル大ボケ」の構成と、強烈なキャラクターのビジュアルです。決勝進出が決まったときにも、**「見た目と動きで殴りこみたい」**と意気込みを語っていました。

(出典:秋田魁新報(ORICON NEWS配信))

優勝会見では、かみちぃさんが「自分たちのような芸風で、キングオブコントを獲れるとは思っていなかった」という趣旨のことを話し、それが受け入れられたことを喜んでいました。

ここに、ポジショニングの本質があると思います。

賞レースで勝とうとすると、普通は「審査員に好かれそうな、完成度の高い、万人向けのコント」に寄せたくなります。でもジェラードンは、自分たちの一番の武器(見た目と動き)を丸めず、むしろ研ぎ澄ませた。だから3445組の中でも埋もれず、観た人の頭の中に「あの人たち」として強烈に残った。

地方企業でも同じことが起きています。

  • 「どんなお客様にも対応できます」 → 誰の記憶にも残らない
  • 「◯◯なら、ここ」と言い切る → 合わない人は離れるが、合う人には強烈に刺さる

好みが分かれることを恐れて角を削ると、結局「どこにでもある会社」になってしまいます。尖りは弱点ではなく、選ばれる理由そのものです。

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3. 1回戦敗退から「せめて簡単なストーリーを」─毎年ひとつずつ、改善を積み上げた

意外だったのは、大会の初期から挑戦していたジェラードンが、当初は1回戦・2回戦で敗退が続いていたという話です。

会見でかみちぃさんは、少し笑ってもらえるようになった段階で「ストーリーが足りないのではないか」と考え、最低限の物語を入れるようにした、と振り返っています。そうやって毎年少しずつヒントを拾いながら、何年もかけて頂点にたどり着いた。

これは、マーケティングの改善サイクルそのものです。

  1. やってみる(エントリーする)
  2. 結果を見る(どこで落ちたか)
  3. 原因の仮説を立てる(ストーリーがないのでは?)
  4. 一つだけ変えて、次に臨む

大事なのは、「キャラクターの強さ」という武器は捨てずに、足りない要素だけを足したことです。ゼロから作り直したわけではありません。

販促キャンペーンが「やって終わり」になってしまう会社の多くは、2〜3の工程が抜けています。終わったあとに「どこで落ちたのか」を振り返らないので、翌年も同じ場所でつまずく。ジェラードンが毎年持ち帰っていた”ヒント”を、皆さんの会社のキャンペーンは毎回持ち帰れているでしょうか。

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また、「ストーリーを足したら届くようになった」という話は、企業の情報発信にもそのまま当てはまります。機能や実績を並べるだけでは伝わらなかったものが、物語にした途端に伝わる。これについては、当社ブログでも詳しく書いています。

▶︎ あわせて読みたい:「真面目にやってきました」だけでは、伝わらない─地方企業のための、ストーリーテリングで伝える会社の魅力|株式会社IWO ブログ


4. トリオからコンビへ─人が減っても、「勝ち方」を設計し直せば勝てる

ジェラードンは、もともとトリオでした。2025年2月にオリジナルメンバーの海野裕二さんが体調不良で脱退し、コンビとして再出発しています。2021年にはトリオで決勝に進出しており、コンビとしては今回が初の決勝でした。

(出典:FANY マガジン、秋田魁新報(ORICON NEWS配信))

会見でかみちぃさんは、自分たちの良さが一番出ていたのはトリオのときだと思う、と率直に語っていました。そのうえで、コンビという今のかたちを作り、結果を出した。

これは、地方の中小企業が直面している現実と重なります。

  • ベテラン社員が退職した
  • 販促担当が営業や総務と兼務になった
  • 予算が去年より減った

体制が変わったとき、「前と同じやり方を、少ない人数で無理して続ける」と、だいたい破綻します。必要なのは、今の体制で一番強みが出る勝ち方を、設計し直すことです。人が減ったなら、やることを絞る。得意な人の得意な部分に集中させる。外部の力を借りる部分を決める。

「前のほうが良かった」と認めることは、後ろ向きではありません。それを認めたうえで今のかたちを作り切ることが、次の結果につながります。

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5. 「オレたちは主人公じゃない」─主語を自分にしないから、ミスしない

会見でもうひとつ心に残った言葉があります。優勝が決まって涙を見せたアタック西本さんが、その理由として、決勝が終わるまで**「オレたちは主人公じゃない」**と自分に言い聞かせていた、と明かしていました。主人公気分になりすぎると、どこかで必ずミスをすると思っていたそうです。

(出典:FANY マガジン)

マーケティングでも、自社が主人公になった瞬間にミスが起きます。

  • 「当社のこだわりは〜」から始まる広告
  • 自社の機能・実績だけを並べたホームページ
  • 伝えたいことが多すぎて、何も伝わらないチラシ

主人公は、いつもお客様です。自社は、お客様の悩みを解決する脇役であり、舞台装置です。「何ができるか」ではなく「お客様がどう変われるか」を語れているかどうかが、選ばれるかどうかを分けます。

▶︎ あわせて読みたい:「何ができるか」より「どう変われるか」-選ばれるマーケティングは価値訴求で決まる。|IWO岩崎/岡山の広告代理店


6. 番外編:大会そのものが、よくできた「参加型マーケティング」だった

最後に、少し視点を変えて、大会の設計そのものにも触れておきます。

今年のキングオブコントは、大会史上初の敗者復活戦を実施し、決勝の審査員も7人体制に増やしました。敗者復活戦の審査は、芸人審査員の評価と、視聴者による国民投票を組み合わせる方式です。ここから勝ち上がったスパイシーガーリックが、11組目のファイナリストとして決勝の舞台に立ちました。

(出典:秋田魁新報(ORICON NEWS配信)、FANY マガジン)

マーケティング的に見ると、これは視聴者を「観る側」から「選ぶ側」に変える仕掛けです。自分が投票した組が決勝に上がれば、その組を応援しながら観る。結果に自分が関わっているから、熱量が上がる。

さらに、決勝のあとは東京・福岡・大阪の3都市で『キングオブコント2026LIVE』の開催も発表されています。テレビで生まれた熱を、リアルな接点へとつなぐ導線まで用意されているわけです。

これは地方企業の販促にも応用できます。

  • 新商品の名前やパッケージを、お客様の投票で決める
  • 地域イベントで「あなたが選ぶ◯◯」の企画を入れる
  • イベント当日の熱を、LINE登録や次回の来店につなぐ導線を先に作っておく

お客様を「参加者」にした瞬間、宣伝は「自分ごと」に変わります。

また、大会名が「求人ボックス presents」となっているように、こうした国民的イベントには必ずスポンサー企業がいます。大きなイベントに協賛することの効果については、こちらの記事で整理しています。

▶︎ あわせて読みたい:W杯スポンサーは効果が出るのか?スポーツマーケティングの本質|IWO岩崎/岡山の広告代理店


7. チェックリスト:あなたの会社の「コント」は、選ばれる設計になっているか

キングオブコントから学んだことを、自社に当てはめて確認してみてください。

  1. 成果が出た施策について、「なぜ効いたか」を説明できるか(再現性)
  2. 勝負どころで、一番強い訴求を出し惜しみしていないか
  3. 自社の「尖り」を、万人受けを狙って丸めていないか
  4. 施策が終わるたびに、次に活かす「ヒント」を一つ持ち帰っているか
  5. 体制や予算が変わったとき、勝ち方そのものを設計し直したか
  6. 広告やホームページの主語が「自社」ではなく「お客様」になっているか
  7. お客様を「観る側」ではなく「参加する側」にする仕掛けがあるか

まとめ:3445組から選ばれるのも、商圏の中で選ばれるのも、原則は同じ

3445組がエントリーする大会で、最後に選ばれたのは、自分たちの尖りを捨てず、毎年改善を積み上げ、体制が変わっても勝ち方を作り直したコンビでした。

地方の商圏で、数多くの同業や代替手段の中から選ばれるために必要なことも、本質的には変わりません。一発のヒットを狙うより、自分たちらしい勝ち方を型にして、何度でも同じ点数を出せるようにすること。そのために、毎回ちゃんと振り返ること。

土曜の夜に笑わせてもらいながら、改めてそんなことを考えていました。ジェラードンのお二人、本当におめでとうございます。


顧客戦略に基づいたプロモーション全体の設計を仕事にしています。市場調査・データ分析から、広告・Web・SNS、そしてイベントの企画・運営や、バルーン・VRを使ったエンターテインメント演出まで、「選ばれる仕組み」づくりをトータルでお手伝いしています。「うちの会社の”尖り”って何だろう」とお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。

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