2025.12.19
数字だけ見ても、答えは出ない ─「理由」と「数」を両方見るマーケティングの話

はじめに

「ちゃんと数字は見ているのに、なぜ成果が出ないのか」

「アクセス数は増えている」
「広告のクリック率も悪くない」
「数字のレポートも毎月確認している」

それでも、
売上が伸びない。問い合わせが増えない。次に何をすべきか分からない。

マーケティングの現場では、こうした悩みが本当に多く聞かれます。
特に近年は「データドリブン」「KPI管理」といった言葉が浸透し、
以前よりも数字を見る文化は確実に広がりました。

しかし一方で、こんな状態に陥っている企業も増えています。

  • 数字はたくさんある
  • 分析ツールも入れている
  • でも、意思決定に自信が持てない

その原因は、決してデータ不足ではありません。
多くの場合、問題はもっとシンプルです。

「数」だけを見て、「理由」を見ていない。
あるいは、
「理由」だけを信じて、「数」で確かめていない。

この記事では、
なぜマーケティングにおいて
定量調査(数)と定性調査(理由)の両方が必要なのか
そして、どの順番で、何を押さえるべきなのかを、
専門家の視点からわかりやすく解説します。


1. 数字を見ているのに、判断を間違える瞬間

マーケティングではよく、定量データという言葉が使われます。
これは簡単に言えば、

  • 数値
  • 割合
  • 件数
  • 増減

といった「測れる情報」です。

たとえば、

  • Webサイトのアクセス数
  • 広告のクリック率(CTR)
  • 問い合わせ数
  • 購入率(CVR)

これらはすべて定量データです。

問題は、数字が間違っていることではありません。
ほとんどの場合、数字そのものは正確です。

では、なぜ判断を誤るのか。

それは、
数字を「答え」だと思ってしまうからです。

数字はあくまで「結果」です。
しかしマーケティングで本当に必要なのは、

なぜ、その結果になったのか?

という問いです。

数字だけを見ていると、
「増えた・減った」で思考が止まり、
次の一手が感覚頼りになってしまいます。


2. 定量調査が教えてくれること、教えてくれないこと

定量調査とは、
アンケートやアクセス解析などを通じて、
**「どれくらいの人が、どう動いているか」**を把握する調査です。

マーケティングにおいて、定量調査は欠かせません。

  • どの施策が一番反応が良かったのか
  • どの選択肢が多く選ばれているのか
  • 全体の傾向はどうなっているのか

こうした判断は、数字がなければできません。

ただし、定量調査には明確な限界があります。

それは、
「なぜそうなったのか」は分からない
という点です。

数字はこう教えてくれます。

  • AよりBの方が多い
  • 先月より今月の方が減っている

でも、
なぜBが選ばれたのか
なぜ減ったのか
までは教えてくれません。

ここを数字だけで解釈しようとすると、
担当者の経験や思い込みが入り込み、
判断がズレ始めます。


3. 定量調査で必ず押さえるべき3つの視点

― 認知度・購入意向度・市場規模

ここで重要なのが、
定量調査=自社の数字を見ること
ではない、という点です。

マーケティング戦略を考えるうえで、
定量調査で最低限押さえるべき情報があります。

それが、

  1. 購入対象層における認知度
  2. 競合との差(どれくらい知られているか)
  3. 購入意向度
  4. 市場規模

です。


認知度を知らずに、施策を考える危うさ

売上が伸び悩むと、よくこんな議論が起きます。

「魅力が伝わっていないのでは?」

「価格が高いのでは?」

しかし、その前に確認すべきことがあります。

そもそも、知られているのか?

購入対象層のうち、

  • 何%が自社(サービス)を知っているのか
  • 競合と比べて、その差はどれくらいあるのか

この認知度を把握しないまま施策を考えると、
課題を見誤ります。

認知が低いのに比較訴求をしても、
そもそも土俵に上がれていません。


購入意向度は「市場の温度」を測る指標

次に重要なのが購入意向度です。

購入意向度とは、

  • 今すぐ検討したい
  • 条件次第で検討したい
  • 今は考えていない

といった、購入に対する温度感を数値で把握するものです。

このデータがあると、

  • 市場全体がまだ冷えているのか
  • それとも自社だけが選ばれていないのか

が分かります。

施策の優先順位は、ここで大きく変わります。


市場規模を知らないと、判断はすべて感覚になる

もう一つ重要なのが市場規模です。

市場規模とは、

  • 購入対象になりうる人が何人いるのか
  • そのうち、顕在層はどれくらいか
  • 潜在層はどれくらいか

という「市場の大きさ」です。

市場規模を知らなければ、

  • 今の成果が妥当なのか
  • どこまで伸ばせる余地があるのか

を判断できません。


4. 「理由」を聞くと、数字の意味が変わる

ここで登場するのが定性調査です。

定性調査とは、

  • インタビュー
  • ヒアリング
  • 自由回答アンケート

などを通じて、
お客さんの気持ちや判断の理由を深掘りする調査です。

専門用語で言えば、
顧客インサイトを探る調査とも言えます。

同じ「購入した」という結果でも、

  • なぜ選んだのか
  • どこで迷ったのか
  • なぜ他社をやめたのか

理由は人によってまったく違います。

この「理由」が分かると、
数字は単なる結果ではなく、
意味を持った情報に変わります。


5. それでも「理由」だけに頼るのは危険

ただし、定性調査にも落とし穴があります。

  • 声を上げてくれる人は一部
  • 印象的な意見は極端になりがち
  • 個人の体験は全体を代表しない

マーケティングではこれを
サンプルバイアス認知バイアスと呼びます。

だからこそ、

  • 定量で全体像を押さえ
  • 定性で理由を深掘る

この順番が重要になります。


6. 答えはいつも、「理由」と「数」のあいだにある

マーケティングの正解は、
定量か定性か、どちらか一方ではありません。

数字で全体を見て、理由で中身を理解する。

この両方を重ねたとき、
初めて「使える答え」が見えてきます。

  • 誰に
  • 何を
  • どの順番で
  • どう伝えるか

が、感覚ではなく設計できるようになります。


7. マーケティングは「当てる仕事」ではない

マーケティングは、
一発で正解を当てる仕事ではありません。

  • 仮説を立て
  • 検証し
  • 修正する

この繰り返しです。

だからこそ、
理由(定性)と数(定量)の両方が必要になります。


おわりに

数字の向こうに、人がいることを忘れないために

数字を見ることは大切です。
でも、その数字の向こう側には、必ず人がいます。

  • 迷った人
  • 比較した人
  • 不安だった人
  • 納得して選んだ人

マーケティングとは、
その判断の背景を理解し、
価値を正しく伝える活動です。

もし今、

  • 数字はあるが、打ち手に迷っている
  • 調査はしたが、活かせていない
  • 戦略が場当たり的になっている

そう感じているなら、
一度立ち止まって、
定量で市場を押さえ、定性で理由を理解する
ところから整理してみてください。


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私たちは、
定量調査と定性調査を切り分けるのではなく、

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